陸上養殖における養殖環境の維持には、水の入れ替えが重要な要素となります。伝統的な車海老の養殖場では、一般的に2つの構造を有しており、1つは外海から栄養塩を含む海水を汲み上げた分、水面に浮上している有機物と共に放水するオーバーフロー構造。もう1つは、効率よく有機物と共にリンや窒素などを放水する池底の水門構造。前者は、取水すれば自然に放水されますが、後者は水門を開ける行為が必要になります。
車海老が生息する好適環境を維持するためには、この水門を毎日開ける必要があり、大きな労働負担となっていると共にシーズン中に養殖場を留守にできない要因となっています。かつ、危険を伴う作業環境でもあります。
こういった労働環境を改善し、伝統的な車海老養殖事業者の皆さんの持続可能性も高めるべく、夏頃から当該環境に対するスマート生産システムの開発をスタート!遠隔で水門を開け閉めできるロボットシステムのプロトタイプが完成したため、矢野車海老さんにご協力いただきフィールドテストするフェーズへ。
今回のロボットシステムは、遠隔操作制御に汎用ReCottoを採用。ReCottoによってIoT化された水門は開閉状態もモニタすることができます。そして、水門を開閉する機構を駆動するロボットは、マイスティアのロボット開発チームが現場往訪して環境構造に合わせカスタマイズ開発、設置しました。
が!設置して1週間ほどが経った頃、設置後に確認した時には動いていた水門が動かないとの連絡あり。Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
設置時との違いは、養殖池が満水になっている点。開発前にトルク検証は行っていたので俄かには原因推察ができませんでした。
ただ、水門が開閉できないのは論外なので、急ぎ!ロボット開発チームに現地往訪してもらい現場検証。不動となっている原因の仮説を立て、環境条件を追検証した結果、事前に計算していたよりも高い水圧、さらに水門が水圧によって壁面に圧着させられる摩擦によって高抵抗が発生していることが不動要因と推定。1週間後、対策案となるモータの回転速度調整とトルク強化部品追加によって無事に問題解決、その後は指令通りに開閉することができています。
プロトタイプ開発時に失敗はつきものですが、矢野代表には、ご心配をおかけする事態を招いてしまいました。一方で迅速な対応を執ったことで少し安心していただいている様子も伺え、ホッとしている部分もあります。
矢野車海老さんでは種苗を生産されており、先月からオンシーズンに突入されていますが、来春まで今回のプロトタイプを現場で使い倒してもらい、私たちも含む伝統的な車海老養殖環境の労働環境を改善する商品版に繋げていきたいと思っています。