ReCotto-Aquaをご利用いただけるお客様が増えるとともに「これじゃ使えない」や、「こんな風に動かすことはできないか?」などなど、多くのご意見やご要望をいただいており、1件1件、原因究明、要因解析を行い対策案の考察を進めています。今月、多くのお声から改良すべき3点についてメジャーアップデートできる準備が整いましたので背景等々も含め少しご紹介しておきたいと思います。
①幼魚および稚魚などへの少量給餌対応
ReCotto-Aquaは、給餌機内の餌残量を給餌機の天面に設置したセンサからの距離で制御しており、それを「重量給餌モード」と称しています。当該モードは10kg未満の給餌仕様を実装していないため新たなニーズが顕在化。このニーズに対応する手段として新たに「時間給餌モード」(1時間当たりxx分給餌する機能)を追加、10kg未満を給餌することも可能にしました。
ただ、給餌機を時間でコントロールすると、給餌機の吐出機構が有している個体差の影響を受けてしまいます。具体的には、同じ給餌時間設定で給餌しても給餌機によって餌の吐出量は違う、という影響です。そして、その吐出量は同じ給餌機であっても経時変化してしまうため、さらに注意が必要になります。ただ、個体差を把握していれば、少量給餌することは可能です。
②給餌機庫内とユーザインタフェイスの餌残量差異補正
開発時のコンセプト(仕様)として、吐出機構が空転して無駄にバッテリを消費させてしまうこと(既存の給餌システムではバッテリ交換の頻度が高いことを開発フェーズで認識しており、交換の負担)を回避させる目的で、給餌機庫内に餌が少量残っている状態(バネコン上端から15cmほど上の位置)でユーザインタフェイスの表示を0kgとするように仕様設計していましたが、実際に複数のお客様にご利用いただいたところ、この差が気になるとのご意見もいただいたため、今回、測定距離vs餌残量の変換テーブルを補正することにしました。補正後の仕様では、バネコン上端あたりで0kgと判定&表示されるように変更しています。
③≒10kg単位の給餌に対して実給餌量が少ないケース改善(バグ)
餌を吐出する制御ソフトウェアの条件判定に考慮が足りていなかった部分があり、1時間前に給餌した時の餌残量(餌の天面の位置)によっては、次の給餌期間の≒10kg単位の給餌に対して数百gしか餌を吐出しないケースがあることを②の実機評価を繰り返している時に現認。この原因を解析したところ、餌残量を計測する機能と餌を吐出するアルゴリズムに考慮が不足している点を確認し、制御ソフトウェアの問題箇所を修正、確実に≒10kg単位で給餌されるように改良しました。
「重量給餌モード」は、給餌機天面の距離から餌残量を変換していることから、既存給餌機庫内の個体差(製造時期によって庫内の容量や形状が異なるため)キッチリ10kg単位で餌を吐出させるコントロールはできませんが、制御ソフトウェアをアップデートした後の給餌機を評価した結果で、±15%/dayほどの誤差で餌を吐出していることをエビデンスとして持っています。
アップデート後の「重量給餌モード」でも±15%/dayの誤差を有していますが、①で触れたように従来機能を踏襲した「時間給餌モード」では、給餌機の個体差(私たちが10台以上の給餌機に対して吐出量評価をしたエビデンスとして)約50%~200%以上でバラついている事実(fact)を踏まえると、「時間給餌モード」のウィークポイントである給餌機の個体差を吸収する「重量給餌モード」を、より正確に投餌量を把握できる手段として使いこなしていった方が経営にもたらす効果は高いと考えています。
今回のアップデートによって少量給餌が可能となりました。ただし、「時間給餌モード」では給餌機の個体差を把握して利用しないと意図しない給餌量となってしまいます。これはReCotto-Aquaに置換する前のタイマ式の給餌システムも同じです。また、「重量給餌モード」でも給餌機の個体差他の影響を多少なり受ける実態にはあります。ただ、過去も、これからも絶対精度ではない部分に重きが置かれ、社会実装されているツール:給餌機だと捉えています。
ReCotto-Aquaを現場実装して5年目、お客様の輪が拡がって2年目。現在、多くのご意見やご要望をいただいている実態は、ReCotto-Aquaが実装されたことによって、既存環境がIoT化され、これまで現場にしかなかった“暗黙知”が、関係者全員がリアルタイムに認知&共有できる環境に変化≒進化した結果であり、現状の姿は、スマート化を進めていく上での必然であると考えています。逆に、アレコレ、ご意見やご要望が出てくる現状は“進化している証し”である、と実感。
最初にガラケーからスマホに買い替えた時も、前車を自動追尾できるようになった初期の頃の車を運転した時も、使い難さがあったと思います。が、時代とともに徐々に性能は進化し、使い勝手は向上、今や無くてはならない道具や機能となっています。今、進化の最中にあるRobot/IoT/AIを活用した道具類も全て同じです。使い難さ≒最初は受け入れ難さがあります。ただ、使いこなさなければ、利便性や生産性を高めることができないこともスマホや自動運転の普及や進化の実態から明らか、です。スマート給餌システムも。
ReCotto-Aquaも、世の中に数ある、そんなスマート給餌システムの1つですが、社会実装に取り組んでいる目的は他のメーカと同じように水産業の持続に貢献したいため、に他なりません。水産養殖業においても“スマート化”が持続していく上で不可避な選択肢であれば、積極的に使い倒してみることが未来へと持続していくKSFであろうと考えています。
KSF:Key Success Factor【重要成功要因】